1000 人に1人の確率 その2

デセールとスイーツ

 多くの人と私の好みの違いの大きいものの一つにスイーツがあります。私は有名店の京橋のHSや恵比寿のTYのケーキを不味いとは思いませんが、自分から買うことはありません。よくTVのリポーターが「軽くて美味しい」と表現しますが「ずっしり重くて美味しい」とは言いません。日本人はこの傾向が強く感じます。スイーツに限らず、料理でも酒でも、この言い方が多用されているように思います。人気のスイーツも同じで、濃厚でずっしりと重く、美味しいと言う表現とは正反対の味が主流です。これは食べ方によるところも大きいのではと考えます。日本ではこれら人気のスイーツ屋のケーキは紅茶などと一緒に、アフタヌーンティー感覚で食することが多いため、その場合は紅茶などに合うように軽いケーキが好まれるのは当然の流れだと言えます。私はこのようなアフタヌーンティー感覚でスイーツを食べることはほとんど無く、確りとした味付けのフランス料理を食べた後にデセール(デザート)としてスイーツを食べることが圧倒的に多く、食事のピリオドとして明確な味わいのデセールを求めているからだと言えます。料理も比較的クラシックな味わいを求め、必然的にデセールも甘さが確りとして明確なものを求めているから、これら人気店のケーキが中途半端な味わいに感じてしまうのだと思います。

 フランスでパティシエの修行をして帰国して最初に考えることは、砂糖の量を60%に控えることだと以前に友人のパティシエに聞いたことがあります。このような軽い味わいのケーキの好きな人に、バンコク・マンダリン・オリエンタルホテル、ル・ノルマンディのブルーベリー・チョコレート・ケーキは絶対にお勧めできません。でも私はこの濃厚なチョコレートケーキは絶品中の絶品だと思います。
また友人のスコータイホテル、シェフ・パティシエのローランも、日本人の客から甘すぎると言われることが多いと聞きました。私は彼の作るスイーツやショーショコラは甘すぎると全く思いません。

 だからこそ、コバヤシシェフの作る、リンゴのタルトや丹波栗のパイ包み、渡邊シェフのプリンが、たまらなく美味しく感じるのです。