地産地消について

イタリアの料理界がフランスより優れいている点は、ずばり、この地産地消の考え方だと思います。
 その土地の食材が一番その土地の料理に合っている。この発想は中華料理やイタリア料理、日本料理に昔からある考え方ですが、フランス料理で取り上げられ始めたのはヌーベルキュイジーヌのブーム以降の時期だと思います。ジョルジュ・ブンランが、著書で旬を取り上げ話題になりましたが、それはつい最近のことなのです。 地産地消ピエモンテで話題になり始めて以降にフランスでもシェフ達の間に広がり始めました。

 私の大好きなレストランでイタリア、ピエモンテ、コスティリオーレ・ダスティの「ダ・グイド」のオーナーのグイド氏は、「イタリア料理なんてものは無く、地方料理があるのがイタリアなんだ。」と常日頃に良く言っていました。似たような丘陵が続くピエモンテの葡萄畑に囲まれた丘の上の小さな村にあった家族経営の居心地の良いイタリア料理店ですが、料理は全てが「地産地消」で、野菜や肉、ハーブに至まで徹底していました。冬には近所で朝に取れたばかりの白トリュフをふんだんに使った素晴らしい料理が出され、彼曰く、白トリュフは香りが飛びやすく、掘ってから3日間が、その素晴らしい香りが持続できる限界なんだと...良く聞かされました。ミシュランの2つ星までいった店でしたが、彼は1997年に亡くなり、店は2002年に閉店しましたが、今まで食べた白トリュフの味では桁違いの美味しさの孤高のレストランでした。

 中華料理でも乾貨(乾物)を除き、地産地消が当たり前で、広東で取れる野菜や肉などが広東料理の必須の食材になっています。暖かな気候の広東では薄味で油控え目、北の北京などでは冬の厳しい寒さを料理で克服するために、強めの味付けで油が多めになってます。高温の油で調理する技法で「爆」という料理方法は北京料理独特の調理方法で広東地方ではあまり行われません。広東では油分の強い北京ダックなどが好まれないのはこのためです。

 日本でも、最もこの地産地消の考え方の進んだ地域は、京都を中心とする関西圏ですね。最近は三浦半島でも京野菜の栽培が盛んですが、私から言わせてもらえば、見た目はよく似ていますが、味は似て非なるものだと思います。富士山の火山灰が堆積して出来た関東ローム層は関西の土より圧倒的にpHが低く、繊細で甘みのある京野菜の持ち味が失われてしまします。以前よく通った京都の某料理店”K”の主人が「東京で京料理なんて呆れてものが言えません」なんて、私によく話していましたが、最近はその張本人までが東京に進出して京料理を出しています。水は京都から運んでますと言っていますが、水だけではなく、土も、空気も、そしてなりよりも食べ手の好みまで違うの関西と関東で、食材まで京都から運んで、はたして同じ料理を出す意味などあるのか大いに疑問を持ちます。

 関東には関東独自の美味しものが沢山あります。料理人は、それをもっともっと生かす事を真剣に考えた方が良いように思います。その食材を生かすための技法としての、フランス料理や日本料理、中華料理などであってほしいと考えます。

...憂鬱な雨の月曜日...常日頃感じていることをふと、日記にしてみました。