蒸発したブラックホール その1 消えた名店

ラ・ベル・ド・ジュール 東京 白山

 新しいシリーズを始めました。題して「蒸発したブラックホール」。英国の天才物理学者スティーブ・ホーキングによれば、永遠不滅と思われていたブラックホール量子論によって最後は大爆発を起こして大量のガンマ線を出して蒸発することが発表され天文学者や物理学者に衝撃を与えました。それに因んで嘗て足繫く通った店を懐かしく美味しいキュイジーヌの思い出とともに考えてみました。

 その昔、白山の路地裏に洒落たフランセーズの名店、ラ・ベル・ド・ジュールがありました。深津シェフの作る料理はフランス仕込みのトラディショナルにして、味はとても洗練されたフランスのエスプリ漂う料理の数々で、その当時は1週間に1回以上通いました。そのかなでも、今でも鮮烈に思い出す料理が「リードヴォーのジュレ」と「プリン」です。リードヴォーとヴィネガーの強めに効いたジュレは、それはそれは絶品でした。またデセールのプリンはグランマルニエなどのオレンジキュラソーの香りが素晴らしいカラメルソース出来が信じられないくらいメチャクチャ激ウマのプリンで、今まで食べた史上最高のプリンでした。
 後日、私と同じ印象を持つレストラン コバヤシの小林シェフに再現を強く望んだほどでしたwww!
このプリンを食べたい人は、レストラン コバヤシで限りなく近いレベルのものが現在でも食べられますw!
 しかし、腕の立つ深津シェフをマスコミが放っておくはずもなく、「料理の鉄人」で鉄人に圧勝してからは予約も取れなくなり、値段も上がり、決定的だったのは、一人での予約を受けなくなったため足が遠のいてしまいました。その後、風のうわさで店を閉め、学士会館のシェフを勤めていたそうですが、現在はそれも退き、料理アドバイザーの仕事をされていると聞いています。

 絶頂期のフランス仕込みの、あの素晴らしい調理テクニックをいつの日か、また再び厨房に立って披露されることを切に願っています。