ラ・ベカスの新境地

ラ・ベカス　大阪　淀屋橋

帰阪の大きな楽しみ、それはラ・ベカスで食事をすること・・・



　今回も渋谷シェフの作り出す、全身全霊を込めた素晴らしいキュイジーヌフランセーズは空前絶後の美味しさでした。発想の素晴らしさ、緻密に計算され尽くしたルセットはトゥールビヨンの如き精緻な美味しさを具現化した皿・・・やはり彼は日本人シェフの中でバリで通用する数少ない料理人だと思います。伝統的フランス料理の技法に裏打ちされた料理は日本人に一切媚びない正統派の堂々とした料理の数々に今回も脱帽しました。

しかも、新機軸として鶏のヴァプールのように、広東料理的なアプローチをしながら、確りとしたフランス料理に仕上げる新作も恐ろしいほどの完成度でした。

【あわおどりのヴァプール、ゴマソース】


　福臨門の神の鶏に匹敵する美味しさです。福臨門と同じで、あくまでも一口、口に含んだ瞬間は軽いのに、後から押し寄せる美味しさのバックドラフトの如き爆発的な余韻の凄さ、この鶏料理は本当に凄いです。

【スズキのポアレ】


　世界最高レベルのポアソン料理人、面目躍如の絶品魚料理です。絶妙な火加減でポアレしたスズキを烏賊のゲソや天草碧竹のガルニチュールが包み込むような一体感で迫ってくる、徹底的に計算され尽くしたルセットは、もはや芸術品の如き輝きを放つ極上ポアソン料理に脱帽です。

【エビとフォアグラのコンソメスープ】


　一見軽そうに見えるクリアなスープですが、一口含むと・・・あり得ない美味しさ。莫大な量のエビのエッセンスが口の中で開闢します。そしてフォアグラの持つ、適度の脂身の滑らかな食感がプラスされて、それはもう天空のコンソメスープになっています。そうあの福臨門の上湯スープのように・・・凄すぎました！

【仔羊のロティ　】


　これぞ渋谷シェフの十八番、仔羊と鴨を扱わせたら無敵の美味しさです。
ヒレ肉の上品かつ繊細な味わいと、ロースの肉の旨みとコクが凝縮した、異なった部位の二点盛りです。極限ギリギリまで火を入れた仔羊肉のこれ以上はないと思える絶妙のタイミングでローストされたヴィアンドは、有無を言わせぬ絶品の美味しさ、まさにキング・オブ・クラシックそのもの素晴らしき仔羊でした。流石渋谷シェフ！！

【ブラマンジェ抹茶ソース】


メインとうって変わって上品でライトな水彩画のようなデセールです。抹茶の薫り高い風味の利いた美味しさは食後のエピローグに相応しい一品です。

【アンフュージョン　ベルベーヌ】


満席のホールからサロンに移って楽しむベルベーヌはグランメゾンならではの楽しみです。素晴らしい料理の余韻に、ひたりながら非日常的で贅沢な時間が過ぎていきます。

　今回も渋谷シェフの緻密で計算され尽くした、ジグソーパズルの如き料理に圧倒されました。でも鶏のヴァプールに見られるような新たな味への挑戦も果敢にしている彼の姿勢は素晴らしいと考えます。
　以前より広東料理的なオリジナルイメージの実験的な皿は数多くありましたが、今回の完成度高さは新たな味の地平線を広げるものと期待するに十分な内容でした。