覇王のフランス料理 その1

ラ・ベカス 淀屋橋 大阪

群雄割拠する日本のフランス料理界を制する覇王。それはラ・ベカスの渋谷シェフをおいて他に考えられません。ほとんど同じ料理に出会うことのない、一期一会のフランス料理は、今回も、まさに「神のフランス料理」と呼ぶに相応しいものでした。


特にオードブルやポアソンに関して言えば、孤高で異次元の美味しさの渋谷ドメインは、圧巻です。1961年生まれの天才シェフの沸き上がる才能は未だ衰えることを知りません。


アミューズホタルイカとジャガイモガレット ガスパチョソース】


アミューズからして恐ろしいほど完成度の高い料理の登場です。ホタルイカの鮮烈な美味しさと、上品なジャガイモの味わいにアクセントを添えるハーブの香り高いフルーティーガスパチョソース。プロローグからして美味しさ炸裂です。


【オードブル1:ハマグリのフランと カリフラワーのヴィシソワーズ仕立て】



なんという上品で高貴な味わい。淡く味付けされたフランとハマグリの味わいは、京料理でも到達し得ない神のオードブルです。さらにカリフラワーのビシソワーズ仕立て、見た目はコンテポラリー系料理ですが、その味わいは、師アラン・シャペルから綿綿と続く、伝統的フランス料理DNAがたどり着いた頂点の美味しさでした。


【オードブル2:ハモのポアレ エノキとアンチョビソース】


丁寧な作業によって骨抜きされたシーズン真っ盛りハモの上品な美味しさを生かす、淡いエノキのソース。ワンポイントのアクセントの味わいを演出するアンチョビソースの作り出す世界は、異次元の美味しさで、圧巻です。インゲンとトマトリーフのガルニチュールの味わいも完璧。京料理を凌駕するハモの味わい、骨切りではたどり着けない豊かな食感、「神のハモ料理」と呼ばせてもらいます。


【オードブル3:ツバスのポアレ アスペルジュ添え】


一見するとシンプルに見えるツバスのポアレですが、その味わいは、香り高く奥深い、渋谷ドメインの真骨頂そのもの、最強のポアソンマスターの一皿は凄すぎます。まさに美食のジグソーパズルと呼べる複雑かつ繊細で素晴らしき味わいでした。ツバスとはハマチの幼魚の関西での呼び方で、渋谷シェフも大好きな食材の一つです。


ポアソン真鯛のポアレ オマールコライユと真鯛の白子の2種のソース】


神のポアソンが降臨しました。国内最高の美味しさを誇る瀬戸内の真鯛を完璧な火加減でポアレし、そこにブルターニュ産オマールのコライユのソースと真鯛の白子を裏ごししたソースが作り出す、頂点のポアソン料理は別次元の美味しさです。カナダやメイン州産のオマールのコライユと異なり、独特の臭みが無く、まろやかで滋味と甘味に富んだトロけるような美味しさです。さらに白子のソースは絹のベールの如き淡く奥深き味わい。何という美味しさなのでしょう・・・東京では絶対に味わうことの出来ない究極のポアソン料理は神そのものでした。


【ヴィアンド:鴨のポアレ すかんぽ添え コリアンダー風味のポルトと赤ワインソース】


完璧な火加減の素晴らしきヴィアンドですが、神のポアソンの後だとバイアスが掛かってしまいます。文句なしに美味しく、すかんぽの酸味とコリアンダーシードの濃厚なソースはネイティブで絶品な味わいですが、印象は薄くなってしまいました。


【スープ:ミンチのタイ風スープ】


鴨に添えられる形で出されたタイ風スープです。タイ風と名をうっていますが、やや暴走気味ですかねーwww もう少しタイハーブなどを使い、エスニック風にした方が印象は良くなるものと考えます。


【デセール:ウッフアラネーズ】


淡く、軽く、爽やかなウッフアラネーズです。メレンゲの優しさが100%発揮された味わいは食事のフェードアウトには最適のデセールでした。


【テ:アンフュージョンベルベーヌ】


クランメゾン、食事のエピローグでの楽しみ、サロンに移って楽しむアンフュージョンベルベーヌ。最上で優雅な時間がゆっくりと過ぎていきます。


今回も気合いの入り方は尋常ではありませんでした。
関西という地の利もありますが、ポアソンの美味しさは空前絶後。しかも京料理をも凌駕する、美味しさは世界最強の魚料理と考えます。今回も美食の神が淀屋橋に降臨しました。