蒸発したブラックホール その15 伝説の最強のタッグマッチ (1)

アンブロアジー フランス パリ

 レストランにおいて、天才シェフに秀才努力型助手の組み合わせは最強です。過去にこのような素晴らしい組み合わせにめぐり合い、今となっては伝説化した素晴らしいレストランが、パリとリヨンにありました。最初はパリの「アンブロアジー」について書きます。
 アンブロアジーのシェフ、ベルナール・パコーは孤児院からミシュランの3つ星まで登りつめた立志伝中の天才料理人です。90年代までは欠かさずパリに到着した日と、日本に帰る前日には出掛けるほど、大好きなレストランでした。パリ5区のセーヌ左岸のノートルダム寺院の対岸に、こじんまりとしたレストランが当時アンブロアジーです。写真は当時の店の場所をその後だいぶ時間が経過した後に撮影したのもです。テーブルは少なく、20人も入れば一杯になってしまうほど小さな店でしたが、その調理場から生み出される珠玉の料理の数々は絶品中の絶品のそれは〜それは〜素晴らしいものでした。特に赤ピーマンのムースは世界中のフランス料理店でコピーされるほど衝撃的な皿で、未だにこれを超えるレギュームの料理には出会っていません。ピーマンのピュレと軽い口当たりの生クリームとの絶妙なハーモニーは、正に孤高の味わいでした。またクードブッフもシンプルなのに絶妙の味付けで、今まで食べたものの中で最高の美味しさのクードブッフでした。これらの料理を天才的な閃きで生み出すパコーを補佐していたのが現コートドールの斎須さんです。この最強タッグからくり出される至高の料理は完璧でレストラン・フランセーズ最高の味わいでした。地方の3つ星を散々食べ歩いてパリに戻り、アンブロアジーの料理を食べると、他の店の料理が霞んでしまうほどの凄さでした。
 その後斎須さんは帰国してコートドールを三田にオープンさせ、パコーは3つ星を目指してバスチーユ近くのボージュ広場にグランメゾンをオープンさせました。この店も2つ星時代までは良かったのですが、3つ星を取ってからは、感激するような料理にはめぐり合うことはありませんでした。
今となっては最強のコンビが生み出した、空前絶後の料理が懐かしく思い出されます。